日本人でよかった、と思わせてくれる土地。
これは現在の山熊田のマタギの頭領が、中学生の頃に制作した版画。およそ40年前の作品です。彼の父親はこの中にいます。いくつもの峰を越え谷を駆けて追い続け、やっと仕留めた熊を解体するのは、疲れ果てた体には大変辛い重労働だそうです。
「爺や(父親)は率先して、ただ黙々と、その授かりものを現場で手早くさばいていた。ただそうあるべきだからそうしているだけだ」
感情や欲は持ち込まない。自分の父を誇らしそうに話した頭領もまた、同じように授かりものに向かい合っています。
そんなマタギの村だけでなく、村上市(旧山北町)には現代だからこそ誇れる生き方を続けてきた人々が、いま、ここにいるのです。
一人の人間というより、自然界の中の一片として在る人間というような、そんな本来そうであったはずの在り方を、私はすっかり忘れていたのでした。
それをこの土地の方々が気づかせてくれました。
そのときから、目の前の世界が鮮やかに、可能性に満ちたものに感じるようになったのでした。
さんぽく地区とは…
村上市山北地区(旧山北町)は、人口6131名(2015.7.1現在)の、新潟県最北部、日本海に面した町です。
羽越本線(特急いなほ、きらきらうえつなど)、国道7号線が主要交通。日本海東北自動車道がまだ開通していない区間。
山形県旧温海町・旧朝日村にも隣接しており、山を越えて交流が続いてきた歴史がある。戊辰戦争の逸話も多い地。
主な産業は、林業、土建業、漁業、農業などです。最寄りのスーパーは山形県の鼠ヶ関です。
観光資源は主に、笹川流れ、ブナ林、渓流釣り、清水、山菜、温泉(ゆり花、八幡)、焼畑栽培の赤カブ漬け、しな布織り、笹あく巻きなどの伝統料理、マタギ文化などでしょうか。