熊の肉は、神様にもらった。 2


まだまだ寒い春の夜。
熊肉の分配のために各々仕事を終えた男衆が、マタギの集落”山熊田”に集まってきた。

台所では到底追いつかないので、外だったり小屋だったりが現場です。

春先に獲った熊4頭分を、雪室っていうか雪に埋めて保存しています。
「他の野生動物に食べられやしないのかな」と勝手な心配をしていると、熊の肉にだけは手を出さないのだそうです。
さすがキングオブ野生!お肉になってもキング。
豪雪地帯の知恵もすごい。4月中旬でまだこの雪だし!


「どこに埋めたっけかー?」の後の図。

山熊田の場合、肉はみな平等に分配されます。
大人も子供も爺やも公平に、熊の巻き狩りに参加した男のみ肉をもらえる権利があるそうです。
※巻き狩りをザクッというと、山をぐるっと人々が囲んで、麓から上方に獲物を追い立てていって、頂上で待ち構えていた「待ち場(射手)」が仕留める、大掛かりで伝統的な狩りの仕方です。

待ち場(鉄砲を撃つ係りで花形)でも、
勢子でも(声を張り上げて熊を追いたてる係り)でも、
頭領(巻き狩りのリーダー)でも、
子供(昔は山熊田小中学校男子生徒の行事だったらしい)でも、
平等に分配。ジャスティス!!!

この恵みを分かち合う精神は、山の神信仰と密接にあって、また興味深い。
でも、女は入ってはいけないのが、熊の巻き狩りの掟。(その辺りはまた改めて書きます)
私は女なので、遠巻きに。遠巻きに…。

と思いつつ、あまりにも圧倒的なのでジリジリにじり寄り。ごめんなさい神様。

この寒い中、さばく手際の良さに目を見張ります。

命を食うっていうリアリティがすごい。

小屋では、

どっさりの熊肉を前にして、狩りに参加した名簿を作って何等分するか計算中。

ジャスティス!

だいたい落ち着いてきた頃、細かく切り始める人が現れ…、

 

 


大きな鍋にどっさり、生の熊肉が!

熊肉は水から炊かなければ硬くなってしまうのだそうで、
そこからじっくり薪ストーブで煮ていきます。
山熊田の場合は下ゆで煮こぼしなんかしません。
脂が大事だそうであんまりアク取りせず、コトコトゴトゴト水から煮込んで、お味噌で味付け。


最後に入れた、その緑の野菜的なものはなんだろう?
なんですか?おかあちゃん。

うおうっ!爺やが山から採ってきたアザミの葉だってさ!!!

「熊汁にはこれが一番だ!」(爺や談)

味噌以外、全部山産。
熊 from 山。 アザミ from 山。 水(沢水)from 山。
味噌 from 府屋!(山を下った海沿いの府屋地区で作ってる方の味噌だそうです)
100%さんぽく汁!

山間でお米も作ってるし、山から薪も切ってくるし、ここで十分豊かに生きていける強さたくましさったらない。
外で凍えた男衆の身体を、熊汁で温めます。

ここまできたら、私たちもジャスティス!
ご相伴にあずかりました。

ふわぁー。
うまいー。
なにこれー。
ジャスティスー。

 

脂が大事っていうのが本当によくわかります。うまい!脂うまい!!!
猛烈な旨味とコク。しっかりとした肉を食っている感のパンチ力がすごい。
この骨太の味に対抗できるのが、なるほどアザミなんですね。
壮絶なバランスです。っていうか、アザミ、こんな美味しいものだったのか!
自分にどんどん血肉化されていく体感をするこの一杯、
身体に山の命がじゃぶじゃぶ注がれていくようです。

ああびっくりした。汁になってもキング。

美味しいとかいう次元じゃなかった。ありがたい。ありがとう。

 

「山の神様に授けてもらった」とマタギ衆は当たり前に言うけれど、
今度、ちゃんと山の神にお礼を言おうと思った、そんな夜でした。


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2 thoughts on “熊の肉は、神様にもらった。

  • 中嶋

    生業の里総会でご一緒した中嶋です。
    HPを拝読しました。
    また、日曜日には、小俣の佐藤さんとも
    知り合うことができました。ご自宅を見せていただきました。

      今後よろしくお願いします。

    • junko1515mm

      中嶋さん、HPにもご訪問いただき、有り難うございます!佐藤家、かっこいいですよね〜♪
      冊子の出来上がり、楽しみにしています。こちらこそ、よろしくお願いします。