シナは雨が好き。 4


シナってご存知ですか? 木です。
私は「さんぽく生業の里」などで、樹木より先に「しな布」という古代から続く伝統工芸織物を知ってしまっていたので、
それが木の皮から作られているとは知っていても、どんな木なんだろう、とボンヤリしていました。

シナ布の草履とかね!

そんなモヤっと感が、やっと晴れました~!

この木、シナノキ、気になる木!

 

ざっと言いますと、シナノキの皮を剥いで、灰を溶いた水(超アルカリ性!)で煮て、繊維を取り出して紡いで作る織物が「しな布」
藤、楮、麻と並ぶ日本の原始織物の一つだそうで、ルーツは北方アイヌ系だとも。この辺りでは1200年前から作られていたとか。

その皮をはぐ作業は、ちょうど梅雨時あたりの2週間程度しかできません。
この時期以外は樹皮が木本にくっついて、うまく剥がれないんだそうです。

山熊田の集落では、剥いでいい日を取り決めていました。今年は(も?)3日間だけ。
雨降ろうが風吹こうが、決行! 今しかないから!

急斜面などだと立木のまま剥ぐこともあるけれど、倒木したほうが作業が楽な上、生育が早いからすぐ横から新たな幹が出て成長を始めるので良いそうです。
(ここもかなり急斜面ですけどね…)
この木は樹齢3~4年くらい。

 

あ~れ~。

やだっ!なにこの柔肌、もち肌、白い肌! 色っぽい!!!

いつのまにか、私、ビショビショ。あれ?なんでだっけ。
その理由は、

剥いだ矢先から溢れ出る水分! みずみずしい!したたる滴る。
生木っていうより、水木。水木がしげる。

その横で、

さすが積年のプロ。あっという間に丸裸です。

もはや、木本が女性の肌のように見えてしまって、

服、脱がしている気分です。ペリペリペリと、快感の感触。なんかごめんなさい!

一通り裸にした後は、表面のごわごわした外皮を取り除くべく、裂いていきます。

端から3尺ほどの部分をバキッと踏んで折って、そこを手掛かりに少し手で剥いたら、外皮を踏んで、

ぺりぺりぺりぺりぺり。

乾きやすいように内皮のツルツル面を外側にして束ねていきます。
この一連の作業を、ただただひたすら続けます。

傾斜のきつい斜面なんかだと、もう本当に大変な作業。

昔は村総出で、ずいぶんと山奥のほうまで取りに行っていたそうです。
さすが、水分たっぷりな時期の、水分たっぷりの樹皮、表皮のゴワゴワ取ったとはいえ、超重い!

当然担いで下るんですよね…。すげえ…、さんぽくの80代女性マジすげえっす!!!
この背負い方というか、ロープの使い方が鮮やかで!覚えたい!ロープ一本ですよ?!

 

シナ剥ぎ2日目のこの日は、さすが梅雨だけありまして。
雨がひどくて、近場だったり車道からシナノキまで遠くなかったりの木々数本に目星をつけていたらしく、
剥いだ樹皮を丸ごと持って帰り、裂く作業は屋根付き屋外で、レッツぺりぺり。

樹皮を反らして裂きやすくすることを「殺す」っていうそうです。
ころし(←漢字にすると怖いからひらがな…)が甘いと、大事な内皮がうまく取れません。

「ちょっとだけうまくなってきたような…」
と自惚れはじめたちょうどその時、「上手、上手」と褒められて、有頂天。へへへ。

 

そんな気持ちわるい笑い声の傍ら、

残った外皮を無駄なく薪にする爺や! 調子に乗ってすみません!最後まで頑張ります!!!

本当は天日に干して乾燥させたいところですが、この日は雨だったので、

作業小屋の天井に吊るして、本日の作業終了~!ヤッホー!

 

こんなにヘトヘトでビショビショになったこの作業でしたが、
「しな布」が完成するまでには、21工程もあるそうです。
この皮剥ぎは、なんと最初の1工程目。

やっと1つ終わった~! って、どんだけ大変なんだよ!?
とツッコミ入れたくなる反面、
古代人の知恵すごいな、とか、現在まで受け継がれてきたのはもしや奇跡レベルなんじゃないか?
と、普段使っている「しな布」の品々への愛情が圧倒的に増した自分に驚いています。

 

悠久ロマンティック。
しな布ラヴ♡の世界へ、ようこそ。


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4 thoughts on “シナは雨が好き。

  • 田中正彦

    はじめまして、突然のコメント失礼します。
    先日NHKで放送された小さな旅を拝見しました。
    私は新発田市在住の者で、3月12日に初めて山熊田集落を訪れました。
    その時は集落の裏手にある剛造山という山に登りたくて訪れた次第でしたが、ちょうどその日はかんじきツアーでしょうか?何か催しをされていたようです。
    私は山登りが趣味で、といっても通常の山ではなく登山道もなく人知れず聳えるような静かな山々が好きで、そんな山ばかり登っている次第です。
    またその山々の山麓についての風習などを調べるのが好きで、山熊田集落にも非常に興味がありました。
    そんなことで、私はいろいろな山とそれらの山村を訪れているわけですが、訪れた多くの集落は限界集落といったことを感じさせられ、山村集落の伝統や風習が失われていく寂しさを覚えていたところ、山熊田集落はそんな中で非常に活気のあるところだと思い、すごく嬉しく感じました。
    またそこに移住され、御活躍されている鈴木様には、こんな私程度でありますが敬意を表したいと思い、つい御連絡させていただいた次第でございます。
    これからも御活躍を願っております。

    追伸、山熊田集落を訪れた時に集落の方にお聞きしたいとおもうことがあったのですが、催事中ということもあって忙しかったのか、人と出会うことがありませんでした。
    山熊田集落の剛造山について、剛造とは人の名前なのでしょうか?あるいは山名の由来はなにかあるものでしょうか?
    突如、つまらない質問をしてしまい申し訳ありません、もし分かるようでしたら、あるいは分かる方がおられるようでしたら御一報頂けると幸いに思います。
    分からなければ無視して構わないです。

    • junko1515mm

      コメントありがとうございます!(そして返信遅くてスミマセン)
      私は今まで山は眺めるものだと思っていたほどのまだまだ初心者レベルですが、田中さんのように山本来の姿のおもしろさがほんの少しづつですがわかってきたような気がしています。
      3/12はおっしゃる通り、かんじきトレッキングのイベントの日でした。また、来る4/30(日)は、残雪のブナ林を歩く会というトレッキングイベントがあります。そこは山熊田マタギの猟場でもあります。
      剛造山についてですが、昔火事で文献が焼失してしまったらしく、現在確かなものは残っていません。聞いた話や説をまとめると、近くに金剛川や大日峠などの地名もあり「剛」や「大日」などの字から山伏(修験者)の修行場だったのではないか、また、マタギは山奥の金脈を探す民がルーツだとも聞きますので、マタギ兼修験者のような山の暮らしの在り方があったのではないか、など推測できます。定かでないので悪しからず…。

  • 畑 幸恵

    北鎌倉で午後の講習を受けてとても素敵な世界を味わって感激して居ます。本来有る人間の生活だと深く感じて帰って来ました。便利と言う物と交換して、何か大切な物を失った日本です。自然と共に生かされてと言う事を忘れてしまった事で色々な事故や事件が起こってるように思います。大滝さんのお話は本当に楽しかったです。
    有りがとうございました。

  • 小澤 明 (オザワ アキラ)

     東京在住の小澤と申します。
    2016年11月に関東ブロックの伝統工芸展2016で名刺交換させて頂きましたが、組合の國井さんとはその後もお話をお伺いする機会が何度かあり、本日も後述のファイナリストになられたことも含めて近況をお聞きしたところです。

     この度は、三井ゴールデン匠賞のファイナリストに選ばれおめでとうございます。
    自分は三井系の企業に勤めており、三井広報委員会主催のこの賞は以前から存じておりまして、伝統工芸に興味を持っていることもあり第1回目から注目しておりました。
     大滝さんのこれまでのご努力が報われ評価されたこと、更には、しな布に注目して頂いたことは大変喜ばしいことと思います。
    しな布を取り巻く環境も厳しく、これを維持、広めて行くには多くの困難が伴うもと思いますが、今後とも何とか頑張って頂ければとささやかながらメッセージを送らせて頂きました。