だんごの節句。


雨の降る中、「わー(私)の、ちっと笹採ってくっからの」と、カッパを着込んだ山熊田の爺や婆。

なにも、こんな天気の悪い日にわざわざ行かなくてもいいんじゃ…、と思うわけですが、
そんなこと言ってられない事情があるようで、聞けば「だんごの節句ださげ」とのこと。
ん? なんだそれ?


気がつけば団子団!

年中行事が多種多様で、信仰も様々な地域だからか、
私の人生の中で初体験の行事や、初めて見る必須アイテムなんかも当然多くて、毎度おもしろいのですが、
お団子メインの節句って、結構斬新だなあ、と。
何かあるとすぐお餅をついたり、お団子やちまきを作ったりするから、
「いつも祝い事のたびにご苦労かけますが今後もよろしく」的な、お米フェスみたいな行事?とか思ってたら、全然違った!

自分の勘違いのはなはだしさに、一人静かに身もだえレベルの恥ずかしさの中、真相は発覚。

実は、「ダンゴの節句」は「タンゴの節句」で、でも「団子の節句」。
と、ダジャレを狙ってないんだけどダジャレっぽいこの紛らわしい音は奇跡か。
端午の節句には、笹団子やこの辺り発祥のあく笹巻き(お米が黄金色になるちまき)を作ってお供えするのだそう。
山北では、およそ一ヶ月遅れで節句を行うらしいです。ほほう、知らなかった…。


これこれ、笹団子。

お土産やさんの店頭に並んでるイメージが強かったから、
「笹団子って、作れるんだ!」と、至極当たり前なことに驚きつつ、
教えてもらいました、作り方。

1、笹を採ってきて洗ってきれいに拭く。
2、洗った小豆をたっぷりの水にいれ、薪ストーブにかけて、水を足し足し2日間くらい煮る。
3、柔らかくなったら、砂糖とちょっと塩を入れ、ヘラでつぶしながらちょうどいい硬さまで煮詰める。

4、沸騰した湯に採ってきたヨモギを入れ、さらに重曹を加えて柔らかく煮たものをザルにあけ、絞る。

5、米粉(上新粉)とヨモギを水を加えながら練る。(この地域では「しとねる」と呼んでます)

6、包餡して成形。それを笹で巻いて縛って、蒸す!

去年小俣集落でやらせてもらったヨモギの採取や下処理もそうだったけど、
各行程一つ一つ、結構な労力だったり、熟練の妙があったりします。
もし書いたら、嫌がらせ級のボリュームになる上、まだ習得してないので、ここでは書きませーん。

私はまだペーペーだけど、やるしかない!今回は、巻き方を習得するぞ。
作るものに応じて笹の表うらを使い分けます。笹団子はツルツルの表面を内側に。

ここ山熊田集落では、今でこそ私たちがよく知ってる、キャンディー状の包み方ですが、
もともとはこのような二つ折りの巾着状だったのだそう。
今では「むかし巻き」と呼ばれています。
なぜ、むかし巻きじゃなくなったか、というと、
キャンディー状の方が格好いいから、とのこと。笹らしいフォルムが引き立つから。


今では貴重な「むかし巻き」!

山熊田の人々の美的センスはやっぱり優れていて、
山の植物や動物の「自然界の美しさ」を日常的に感受してる。
それを自らに応用することで、暮らしや人生をより良くするという。
アートの存在意義みたいなことを、この山奥でずっと古くから当たり前に取り入れているのがすごい。
取り入れる基準が「流行ってるから」とか「売れるから」じゃなくて、自分が「いいな」と思ったからで、
その感性を磨く教材は、山。
最寄りの集落まで今でも8kmあるし、冬期は雪で閉ざされ陸の孤島になってきた村だけあって、
営みそのものが圧倒的です。

御歳80の鮮やかな手さばき!
この日は150個くらい作りました。作業が上手くなってきたころに終わるのは、世の常。

でも実は、むかし巻きの方が簡単な上に、しっかり巻けるから蒸しても中身が出るアクシデントも少ないなど、案外実用的で。
デザインと実用性はやっぱり反比例するんですかね。

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