ゼンマイ。こいて、もんで。


「屁をこく」とか、
「居眠りこく」とか、
「ウソをこく」とか、(下品ですみません)
そんな類のサウンドで「ゼンマイこいてた」的なこと言われても、全然ピンときません。

ゼンマイって、あの、山菜の王様的な、アレですよね。

たまたま道端にいらした、ゼンマイ。
どうやらあなた、人間に「こかれてる」らしいですよ?
どういうこと???

って、こかれてたーっ!

片手で束ねたゼンマイのクルクル部を優しく持って、反対の手で一本一本抜いて毛をしごく=「こく」
「こく」って「扱く」なんですね!
昔の脱穀機の「千歯扱き」的な意味でした。

ええ、ええ! なるほど。 ゼンマイのフワフワを取るための「こき」!

こかれ前。

こかれ済み。

ツルツルツヤツヤ☆

太くて良いゼンマイだなあー。うっとり。
おばあちゃんがゼンマイこきながら、ボソッと、
「これの、昔はの、よく内職したもんだ。これをの、米沢の方から買い付けに来て。小さい織り機持って山越えてくる人もおったりの」と。

って、聞けばなんと、このゼンマイのフワフワ、着物になってたそうですよ!

葉っぱなどの不純物を取り除いて、綿と混ぜて、反物を作っていたそうです。
えええええーっ!!!! 超微々たるフワフワの量なのに?! どんだけ要るんだゼンマイ?!
すごいなあ…。途方にくれるわぁ。

今ではこの辺りではおおよそ滅んでしまった米沢の「ぜんまい紬」文化ですが、
でも、そんなことができるほど山の恵みがたくましい地だったんだなあ、と感慨深くさせるフワフワ。
そして、それを当たり前に話すおばあちゃんのデカさ、ひっくり返ります。
山を越えたら山形県。不思議な山北のコミュニティ。

ちなみに昔は、海岸沿いに道はなかったらしいです。山道、命!

 

しかしまだまだ!
食べる方のゼンマイも、ものすごい手間かかってたーっ!!!

さっと茹でてから、天日干し。
干しながら、はじめの頃は優しく揉んで、乾いてきたらしっかりめで揉んで。

右に、左に、揉みまくり!
一日に何回も、何回も何回も揉みまくり!!
さらに何日も何日も、揉みまくり!!!

不思議なことに、干せば干すほど赤みが増して、黒っぽくなってくる。
日焼けみたいだなあ。

太、中、細と品質を分類して、

こんなに小さくなりました。ふぅ。

しかしまだできあがりじゃなくて、乾燥したものを今度はハサミで一本一本、根元の硬い白化した部分をパチパチ切る。
硬いから地味に辛い作業です。
目の悪いおばあちゃんがたなんか、相当きついでしょうに。あわわわわ。

さっき、地元の通りがかりのおじちゃんとゼンマイにまつわるお話を教えてもらっていたら、衝撃の事実!
1kgの乾燥したゼンマイの完成品は、採りたて生の状態で、およそ12kg分相当らしく、
「水担いで下るようなもんださげ。わはは」
と豪快に笑うおじちゃんのガタイが良いのも納得です。

ほぼ水のゼンマイを山で採って担いで下りて、
で、こいて茹でて揉んで切って。数日かけて。
こんな壮絶な手間をかけて作られるゼンマイですが、
みなさんもご存知の通り、食べたら超絶うまいんですよ!

 

日本人のDNAがよろこぶこと必至のゼンマイ、
もはや「雪深い山北の山と、そこに生きる人々の間にできた娘が、手塩かけられすくすく育ちました」的に見えてます。
これからは大切に、ありがたくいただこう、この日焼けした娘さん。

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