水源は滝の上。


山北に来てシビれるくらい驚いたのは、きれいな水がものすごく豊かだということ。

海も川もため息もれるレベルの美しさなのはわかりやすく驚けるのですが、

生活に寄り添う水が、本当に豊か。

 

多くのご家庭の蛇口からは清水や沢水がフリーで出てるし、「ため」と呼ばれるマイ池が家の傍にある家も多くて、

野菜や工芸材料や道具を洗ったり、魚を飼ったりするのに大変便利!

冬は融雪にも使うから、もはや山の水ありきの暮らしなのですが…、

 

あれ?止まった?! 蛇口ひねっても出てこない!!!

そういや、自分も恩恵にあずかっている水の正体を知らないってどうなの?

 

というわけで、急遽、村の爺やがたと水源整備に行くことになりました。

「うぇぞー(上沢)」の先の滝の上から取水してる、という情報しかわからず(山の地名がイマイチわからないので謎増し)

さっぱり想像すらできません。

 


車で上流へ。下車してさらに沢沿いに奥へ進みます。すごい奥地だったらどうしよう…。結構軽装で来てしまった。

ドバッと降ったり止んだりを繰り返す雨模様。12月末なのに。

 

妙な気象のおかげで、積もった雪が雨で解け、カンジキ無しでも進めます。

 

 

道中、ところどころ顔をのぞかせる塩ビのパイプ。

これが山熊田の村までずうーっと続いているのです。

 

先に進んだ人の雪の上の足跡を頼りにどんどん進むと、

 

唐突に、いろんな太さの塩ビパイプが縛り上げ?!

 

水源地近くに資材置き場を作り、毎年毎度のメンテナンスを楽にするためのアイディアだそうです。

おおー。頭いいなあ!

 

80cmくらいの長さのパイプが雪崩で押されて壊れたらしく、鋸で切って新たなパーツを製作。

 

それを持って、

滝の音が近づいてきたあたりで、急斜面の補修箇所に到着!

新しいパイプを継ぎ、その辺に生えてる木や、若木を鉈で切って地面に刺してロープでパイプを固定。

なんだか補修がサバイバルっぽい。

 

見とれてばかりで気づいたら、

つま先から徐々に確実に冷えてくるから、滑らないように足踏みだ!

雪深くなくてよかったけど、雨は土砂降り。さっむー。

 

滝の前まで行ってみた。

「滝って、こんなに日常的だったっけ?」と感覚がずれるほど、ダイレクトに恩恵を受ける我が村。

 

なんだっけ、この景色、どっかで見たことがあるような…、

と引っかかってたんですが、

 

北斎の阿弥陀ヶ滝でした。円形宇宙っぽい部分を私たちが頂戴しているということですね。宇宙水。

落差はこれほど立派じゃないにせよ、雨と雪解けで増水した滝の迫力はなかなかすごくて、滝壺から吹き付ける風がブワッとさむい!

 

「上まで行ってみるか?」と言われましても、スパイク付きの長靴じゃないし、私にはまだ早いっていうか…、

え? …や、ヤモリ?

いやいや、そんな岩肌に命綱無しで張り付いて進むとか、想像した時点でちびってますけれども!

どんな体の仕組みなんだ、マタギ。

マタギを引退してもなおズバ抜けた爺や達の身体能力に、もう、おののくしかない。

 

 

滝の上の取水口らしき箇所に溜まった落ち葉などを大の大人達が本気出してザクザク掃除すると、滝はたちまち茶色に勢いよくっ!

(スリムドカンのCMを思い出したってことは胸にしまっておきました)

 

奥がもっと上流から流れる沢、手前が滝から合流する沢。

湧き水が地表に出て流れたら、それはもう、沢…。(遠い目)

この辺りの地盤は粘土質に近い柔らかめな岩で、水量も多かったからか、すぐに透き通りました。

行ってらっしゃーい、山の養分。

 

 

滝の上のお掃除も終わって、少し下ったところに通水チェックポイントのバルブがあり、問題解決を確認します。

村までの途中途中にこういうポイントがあって、詰まりどころや故障箇所を特定するのだそうです。

ジャバー!やったー!わーいわーい!!!出たー!!!

 

 

寒いし雨ひどいし、無事直ったことですし、さあとっとと車に乗って帰りましょう!っていう引け腰の私と裏腹に、

ぐいぐい進むチェックポイント巡り。

渓谷にかかる橋を川面から見るのって新鮮!(と、凍える気持ちをなんとかごまかす)

しかしもう、みなさん、積んでるエンジン違いますね…。

 

 

確かに、面倒でも今やっておいたほうが後々困らないから結果的に最も確実で楽なことって世の常ですよね…。

例えば、妥協せずしつこくやるべき研ぎを手抜きして、仕上がりが悪かったり余計な手間が増えたりした漆や金工作品の制作や、

めんどうな下処理を手抜きして、美味しくない料理になってしまったり、と、

はからずも、私のいい加減さが露呈したあの頃の苦い記憶を思い出すはめになりました。

 

それはさておき(笑)、

今からどこへ行って何が起こるのがわからない暗中模索感満々だった数時間前よりも、

この沢を奥へ進み滝の上に水源があって、資材置き場があって、修理して掃除して(帰ってから、ヤモリルートじゃない迂回路の行き方も教えてもらった)、通水チェックして、という一連の流れを知ることができたから、次回はちゃんとイメトレと心構えができているはず。

 

知らないことって怖いけど、知っていくのはあからさまに世界が広がっていくからおもしろい。

 

 

村ができてから先人たちが作ってきてくれた、暮らしに寄り添う水。

これからも恩恵を受けながら、保持していきたいと思いました。

(あんまり役に立たないかもしれないけど、がんばるぞ)

 

 

 

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